第一章

ドン・ホセマリア・アリスメンディアリエタ神父はバスク独立運動の精神的基盤を「共同活動と敬虔な友愛」に求め、職工学校の青少年を担い手にした事から始まっている。

それは「モンドラゴンの社会運動は資源と労働の連帯にある。なぜならば、資本は労働の成果であり、労働の効率を助けるのに不可欠の要素だからである。

又、その社会運動は、共同協同組合の集積体としての、地縁的コミュニティーは、大部分が働くものに拠って構成され、協同組合の生産する物を消費するから、共通の利益に結び付ける。

そして又、協同組合の線で経営されて居なくても、全ての企業にも連帯する。」こうした思想から神父は、教育リーダーを養成する為に、1943年に生徒20人の林間学校を設立した。その中から11人が、技師の資格を取得し、1956年にその5人が、ウルゴールで最初の労働者協同工場を、設立して実践に移った。

こうした動機から、モンドラゴン生産協同組合では、協同組合が独立と教育とに密接に、結び付く事になった。言うなれば人造り協同組合である。

「教育から協同が生れ、協同の実践は不断の教育となる。」と云うのが、モンドラゴン協同体の綱領である。

協同組合は、資本と労働の両方の提供する組合員に依って、設立される事業体であり、資本と労働との対等の原則に依って、両者の純粋な結合を、樹立するものである。

組合員各自の意志は、経営管理者のそれと同じく、事業体の権利と要求を代表し、各自の能力に応ずる、管理への参加を導くものとする。

協同組合は、有用な労働をし、かつその就業に必要な金額に等しい資本を提供される者に開放される。

協同組合への加入は自由意思に依るべきであり、組合のサービスを利用する事が出来、組合員としての、責任を引き受ける、意志のある人々の全てに対して、人為的な制限、或は何等かの社会的、政治的又は宗教的な差別なしに、認めねばならない。

利益の一部は、労働者の教育〈社会的基金)に充当され、その残りは組合員の、経済的資産(積立金)に留保される。各人は提供した労働と参加した、資本に応じて利益の分配を受ける。

モンドラゴンとは一口に云うと、働く者は人間的、技術的自立と近代的な、労働の共同体の建設である。それは、自主管理と、社会ネットワークの形成と、新しいナショナリズムの確立を主題とする、一大シンフォニーとも呼びうるものである。

自主と多様性を認め合った、連帯の哲学が、現代世界の中心課題だとすれば、モンドラゴン協同組合の道こそは、単にバスクとスペインの問題であることを通り越して、一般性・世界性を持った主題であり、今の行詰った人間社会に、青春を再び呼び戻す、原理と云えるであろう。
何よりも、モンドラゴンの実験は急速に変り、また益々競争が激しくなりつつ環境発展途上の経済において、労働者達がいかに自主管理システムを創造し、拡大していく事が出来るかを示してきた。

この実験が労働者、協同組合そして地域社会を、一緒に束ねてきた道筋そのものに依って、実験が弁明されると共に、正当化されている。

モンドラゴンの経験を理解しようとするならば、その背景となる三つの要素を、考慮する必要がある。第一は一九三〇年代にバスク地方で進められた工業化の程度、第二に労働運動、第三にバスク民族主義、及びスペイン中央政府と、バスク地方との緊密関係である。

スペインとフランスの国境に跨るバスク人の現在の領域は、歴史の潮が満ち引きする中で形作られて来た。古典時代にはピレネー山脈がバスク人の故郷だった。未だ嘗てバスク民族は、スペイン国家に完全に統合された事はない。

モンドラゴンに赴任した、ホセ・マリアアリス・メンディアリエタ神父はそのエネルギーを、若者の育成に引き込んだ。キリスト教的、人間的、社会教育的な価値観を授けようと、カトリックの社会教育的な義務についての、学習グループが設けられた。

今日では、若い協同組合はむしろ民族主義的ないし、社会民主主義的イデオロギーから出発する。神父は実際的な人間であり、ビジョンのある現実主義者だった。

「教条の虜となって振舞うことなく、むしろ教条と現実を対照させて来た。」
「働くという事を、低く見てはならない。新しい世代の人々がそうした誘惑を、感じるような事があってはならない。」

一発当てる事のみを狙った職業とか、官僚的な仕事が満ち満ちている。我が国のような所では取分けそうだ、自己向上道は全ての段階に向けて、開かれていなくてはならない。
しかしそれは、正常な社会的道筋を通じて、真面目な絶えざる労働を、通じてでなければならい。

我々が段階を踏んだ、技術教育を推奨するのも此の為である。そうした技術教育は真に才能ある者に、機会を与えるばかりか、そうでない者の機会も奪うことなく、実際的な援助を与えるからだ。

「結果的には、我々の事業体の根本原則を、現行の法的規制に調和させ、モンドラゴン初の工業組合設立を可能とする、定式が見つかった。そこまで至るには、法律上の困難以上のものを、克服する必要があった。」

当初から我々は現代的な企業にとって、必要な事を頭に刻み込んだ。そして経済的、技術的、社会的、財政的にあらゆる点から見て凡ゆる点から見て事業体が発展を活力あるものとするよう定式は活用された。単に限られた分野の活動にのみ、適合しうる二次的な存在ではない。経済の幅広い分野に縦横に適したものでなければならなかった。

全ての工業協同組合は連携協約の定める原則と同様の線に沿ってその内部に組織している。全ての組合員が公正に完全な責任を分かち合えるよう全ての労働者は各協同組合員の組合員になる。

良い教育とは理論的であると同時に、実際的であるべきである。理論的な面では、常に方法と総合的な理解を強調しなければならない。

学生達は先ず第一に、所有、仕事、資本、報酬。資本と仕事の関係、雇用者と従業員の義務、双方の権利と職業倫理と云った、根本の問題を理解すべきである。
次いで学生達は生産、消費、金融、市場等の諸概念が意味するものを、理解しなければならない。だが社会経済的な理解が深まるに連れて、学生達を実務的な仕方で、教育して行くべきである。
これ等実務的な諸問題には、殆んど完全に没頭しながらも、計画や企画を修正出来るような、ユートピア的理想に向かって、行くべきである。

理想を具えた人々に依って、産業が形成されない限り、より公正な社会は、実現しないと信じていた。「技術の修練を通じてこそ、人間と社会の一層の発展を、許容するような過程を生み出し、展開させていく事が出来る。

神父が長期的に描いていた、教育のビジョンは、技術教育だけでは地域社会を満たす事が出来ないから、将来的には、もっと幅広い役割を果せるような、援助機関が必要だ。

「知は力だ、知の社会化こそ、力の民主化だ。」

モンドラゴンに於いては、(一)雇用(二)教育(三)仕事の分化---其々に重要な特徴が露わになっている。上からの計画かよりは、下からの分権化と参加にかなりの重点が置かれている。

モンドラゴンの教育は、非常に革新的なものであり、アトコープそしてイケルラン、前者は実践と理論の結合の必要性を、又後者は研究開発をそれぞれ強調する。



(43 43' 23)

  • 最終更新:2013-07-26 14:33:12

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